§2. 21世紀型教育を支えるビジョン
社会科の授業風景
2011年度当初に「学校づくり委員会」を発展的に解消して「新学校づくり委員会」を組織し、授業の質について対話を始めました。そこでまず確認したビジョンは、聖学院は21世紀型教育に挑戦し、グローバル人材を輩出するということでした。
どんなに質の高い授業のバージョンをアップさせても、それが20世紀型教育の枠組みの中で行われていたのでは、グローバル人材は育たないからです。
理科科の教科会議の様子
20世紀型教育と21世紀型教育はどう違うのか?それについては、ここ数年数えきれない時間を議論に費やしてきて、次のような結論にたどり着きました。
近代社会が誕生して以来、only one for othersの夢を見ながらも、逆説的に社会は多様な価値観に基づいて、どんどん個人化が進んでいます。多様な格差も生み出し、姿を変えた戦争は絶えることなく頻発し、代わりに持続可能な社会の道への視界はどんどん悪くなっています。
この社会を是正することができなかった20世紀型教育に対し、聖学院の21世紀型教育は、only one for othersを達成する人材を輩出することは必至であると想いを一つにしています。そして、この“only one for others”こそ、聖学院が想い描いているグローバル人材です。20世紀は1989年のベルリンの壁が崩壊するまで、世界は境界線がグローバル人材の活躍の壁になっていましたが、89年以降、時代はいよいよ世界市民規模の“only one for others”を求めています。その声に聖学院は耳を傾けたのです。
最初、20世紀型教育は、学んできた力を重視していれば、それで社会を維持できたかのようでした。しかし、私たちは3・11で改めて確認したように、社会の矛盾の増幅は、予想もできない不安を生みだしています。この不安を乗り越えるには、何が問題なのか課題なのか、自ら問いを立て、探求する力が必要です。また、エジプト革命やニューヨークの学生や失業した若者たちのデモでも明らかだったように、世界中の情報が個人に瞬時に集約できるWebの時代です。コラボレーションしたりチームを作ったりする力も必要です。そして何より自分の判断基準をつくり、それに基づいて自分の考えを発信して共有していく力が必要です。
このような学びはもはや20世紀型教育の許容量を超えてしまいます。学んだ力以外に、学ぶ力、学ぼうとする力、そして共に生きる力の育成に挑戦する必要があるからです。この幅広く奥行きのある教育が、聖学院が目指す21世紀型教育です。
こうして、この21世紀型教育というビジョンをいつも確認しながら、それを実現する知性と感性を養っている聖学院の授業の質を共有する対話がはじまっているのです。