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【海外研修】タイ研修旅行レポート①「循環する暮らしを営む村」

言葉が通じなくても話しかける

本校の代表的な海外研修のひとつであるタイ研修旅行は、今年は12月21日(土)に旅立ちました。日本では味わえない多くの貴重な出会いと経験を得て、12月31日(火)に帰国予定です。引率で生徒たちと一緒に過ごしている伊藤 豊 教諭から現地レポートが届きましたので、以下ご紹介いたします。

ホイヒンラートナイ村

ホイヒンラートナイ村は、チェンライ県の西端ウィアンパパオ郡の山村、カレン族の居住地です。切り立った山の谷間の小さな沢に沿って高床式の家屋が並んでいます。その向かい側の急な斜面は彼らの畑です。沢のほとりに立って見上げると、斜面をお茶の枝葉が覆い、そのさらに上に目を遣ると森の木々が葉を茂らせています。私たちが訪れたのは日曜日のお昼前、村の人たちはそれぞれに集まって談笑していました。

この村は焼畑農業をしていながら「森林保全型農業」を営む村として知られています。私たちは青年団の女性リーダーに森を案内してもらいました。犬も3匹付いてきました。
1時間ほど歩くと野原が開け、谷の向こうの森が見渡せました。風がゆるく通ってゆきます。足元の野原をよく見ると草の間に陸稲を刈り取った跡がありました。黄色いナスや小さなトマトのような実(実はナスの一種)、真っ赤なトウガラシもあります。野原のように見えたのは村人たちの畑でした。

野原のような村の畑

焼畑には森林破壊、煙害という問題があります。タイ政府は焼畑に対して一時期を除き基本的には禁止の姿勢です。しかしこの村は、約10年のサイクルで畑を移動させます。焼畑をした土地は7年ほどで回復するそうですが、その基準を上回る期間を置くことで森と共存しているのです。
生徒たちは畑と風のにおいを吸って、向かいの山に「ヤッホー!」「おーい!」と叫んではこだまに耳を澄ませていました。ナスとトウガラシを摘んで村に帰りました。

村には電気が通っていません。貧しいからではなく、また行政の手が届いていないからでもなく、村人たちが協議して電気を通すのを拒否したからです。村の暮らしを守るために断ったのだそうです。小さな円卓を囲んでカレン族の料理をいただき、沢の流れの音を聞きながら静かな夜の時間をすごしました。もし電気が通っていたら、こんな時間はなくなっていたことでしょう。

カレン族の夕ごはん

夕方、お風呂上りの子供たち

今年の9月23日、この村始まって以来の大水害に遭いました。山の上の土壌が崩れ、濁流が林をなぎ倒して村を襲いました。小学校の校舎が流され、クルマも2台流されましたが、幸いなことに命を落とした人はいませんでした。亀や蟹が沢の崖を登り、水が止まったことに異変を感じた人が、近所の人たちに避難を呼びかけたのだそうです。集落の少し上にある巨木が倒れ、土砂や倒木をせき止めてくれていました。こんな奇跡のようなことも、もしかしたら村人たちの暮らしの必然なのかもしれないと思わされました。

村を救った木

生徒21名と教員2名、加えて本校OB1名は、このホイヒンラートナイ村にホームステイをしました。このプログラムは、ルンアルン(暁)プロジェクトの中野穂積さんのご協力によって行いました。中野さんは山岳民と共にコーヒーの有機栽培にチャレンジされている方で、私たちは毎年とてもお世話になっています。ルンアルン・プロジェクトの拠点「暁の家」にも泊めていただき、活動を一端に触れることができました。中野さんの講演は、来年夏に発行予定の報告書に掲載いたします。
(続く)

ホームステイ先のご家族と

日の出前、村の朝が始まる