【中2夏期学校】北アルプス蝶ヶ岳登山 7月23日(火)~25日(木)
「雷雲に囲まれているため、この状況では実施をすることを許可できません。まず30分程様子を見ましょう。」
夏期学校2日目、7月24日午前4時頃に、山岳ガイドの方から言われた言葉です。叩きつけるような大雨と雷の音が響く中、安全を確保するための判断でした。しばらく時間が経つと雨が少し軽くなったように感じたものの、天候を確認すると、やはりこの後も雷雨が続くことが判明。今年の蝶ヶ岳アタック中止が決定しました。人の力ではどうにもならない自然の力の前で、安全のため「無理をしない」という大切な判断をした結果でした。
生徒に対してその判断を伝えてくださったのは、ガイドをまとめている山田淳さんです。生徒が分かりやすいように「なぜ中止の判断をしたのか」を説明していただきました。それを聞いた生徒たちからは、残念がる声や溜息も聞こえてきました。教員としても、生徒たちの今までの準備の積み重ねや取り組み、熱量を知っているだけに、とても残念でした。
その後、気持ちを切り替えて予定を大きく変更しました。最初に、多様な経験を持つガイドの方々の講演会を開催しました。「天気の専門家」「南極観測隊」「屋久島」「トレイルランニング」「ガイドになるきっかけ」といったトピックでお話しいただき、普段聞くことのできない話を聞く機会を頂きました。関心を持って聞いていた生徒が多かったです。
講演会の後は、国語科の安藤先生がファシリテーターとなり、急遽ワークショップを実施しました。「メタ認知」という概念を意識したワークで、生徒に対して「頭の上から、自分の行動を冷静に見つめるもう一人の自分」を作ってみよう、という声掛けから始まり、グループごとに2つのお題を考えました。
1.今どのようなことを思っているか?(昨日から今日にかけて)
2.「自分ではどうにもできない状況」ってほかにどんなことがあるか?
上記のお題の目的は、
① 今回登れなかったことを踏まえた自分の感情を表出すること。
② 「メタ認知」を知り、自分の感情・考えを俯瞰して認知することを心がけること。
③ お互いの思いを傾聴することや、これから起きる可能性がある「自分ではどうにもならないこと」を共に考えることで、これからの人生の中で「どのように向き合うのか」を考えるきっかけになってほしい。
という願いが込められています。
まずは、自分ひとりで考えてしおりに記入した後、グループでお互いの意見を共有しました。グループワークでは、活発に自分の書いたことを共有して、グループ内で意見交換をしました。今回の夏期学校は、登山中止による急な予定変更となりましたが、生徒たちの対応力にも助けられました。
ワークショップ後は天候が回復してきたため、午後は徳澤園から明神池まで歩くこととなりました。そのことを生徒に知らせると、出発へ向けて生徒たちは意気揚々と準備をしはじめ、やはり大自然の中で歩きたかった気持ちを強く感じました。
まだ雨が降る中での出発となりましたが、途中晴れ間も見え、表情豊かな上高地の自然を満喫することができました。明神池は、凛とした空気を纏い、我々を迎えてくれました。周辺を散策して、池の静寂な水面の部分とそこから下流へと離れている部分との「静」と「動」の表情の違いにも驚きつつ、自然の美しさを堪能しました。
徳澤園へ戻ってくると、お待ちかねのソフトクリームタイム。みんな美味しそうに食べていました。何人かの生徒から「もうひとつ良いですか?」という声が、ちらほら…。
今回は蝶ヶ岳にアタックできませんでしたが、多くの非日常体験をすることができました。「準備の大切さ」「当たり前のことはない」「自然の脅威」「どうにもならないことがある」「無理をしないこと」「出来事を俯瞰する」等、生徒たちはこれからの人生で目の当たりにするこれらの場面に、少年期で身をもって体験し考える機会になったと思います。今回の体験をどのように活かしていくのか、人によってタイミングは違ってくると思いますが、これから歩む道の中で当たり前のことはなく、日々「感謝」の気持ちを感じ伝えられる人に育ってほしいと、心から願う3日間となりました。(中2C組担任:川西祐毅)