SEIG NEWS

高い塔などいらない(10月26日全校礼拝にて)

旧約聖書創世記 11章1~9節 バベルの塔

聖書の物語は私たちに色々な情報を提供してくれます。
バベルの塔の物語。
ここにも沢山の情報が散りばめられています。
その中から今朝はひとつの情報を見ていきたいと思います。

バベルの塔の物語。
高い塔を建てると言葉がバラバラになりますよ
を告げている物語です。

ここでいう言葉を民族の言葉、言語と読むことも可能でしょう。
ただ同じ言語を使用しているのに、相手に自分の思いが伝わらない。
伝えようと思って言葉を沢山語りだせば、こちらの意図とは逆にどんどん誤解が進んでいく。
言葉がバラバラになっていく。
言葉がバラバラになっていくと、不快感が生まれ、憎しみ、争いが始まって来るでしょう。
そして最後は戦争です。
いま世界中のあちこちで起こっていること、起ころうとしている戦争。
多分、原因は同じです。
言葉が伝わらなくなっているから。
私にとって大切なこと。
正しいと思っていること。
それが相手の心の中に入っていかない。
言葉が一つにならない。
バラバラになる。

では言葉がバラバラになるのはどうしてか。
物語は、それは塔を作ったからだ、と言います。
塔とは何でしょうか。

物語の中では、今まで使っていなかったものを人類が使い始めた、という記述になっています。
それを使い始め塔を建設し始めた、と。

新しい技術の発見。
今で言えば半導体でしょか。
少し前なら原子力
産業革命を起こしたのは蒸気機関でした。
新しい技術を使うとこれまでの世界が一新されます。
まさに世界が違う次元に登ったかのようになります。

塔を建てる。
それは、自分たちはどこまでも高く登れるのではないかと思わせるものです。
確かに、それは気持ちの良いことです。
ただ、この時の人の心を考えてください。
なぜ、人は高いところに行こうとするのか。
物語では天にまで行こうとしていたとあります。
神様のようになろうとしていたということでしょう。

この心はどういう心ですか。
なぜもっと高いところ
神になりたいと思うのですか。
それは今の自分を否定したいと思っているからでしょう。
今の自分ではなくもっと違う私に。
今の位置ではなくもっと別なところ、高いところに。

今の私ではなく別な誰かになりたい。
これはOnly Oneの心ですか。
Number Oneの心ですよね。
他の誰かと比較して自分を見る。
他の誰かに依存して自分をはかる。
他の誰かに憧れ、なろうとする。
全部Number Oneでしょう。

Only Oneとは何ですか。
神様に造られた本当の私。
その私はけっこうすごい。
それを見つけるのが人の本来の務めではないのか。
それが、聖学院が問うてきたことです。

世界で起こっている戦争は何十年と人の心に傷を残すでしょう。
あいつが憎い、許せない。
当然です。
ですが、それは自分の心が自分以外の者に奪われている状態です。
何十年もかかるでしょう。
そうであったとしても、その他者に心奪われが人々に
本当の自分と向き合う素晴らしさを伝えられるのは
自分と向き合ってきたものだけです。

Only One
それを見つめてきたものだけが戦争で傷ついた心を癒す仕事ができるはずです。
高い塔などいらない。
本当の自分と向き合う。
世界に必要な者になっていきましょう。