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【始業式メッセージ】その根底にある良いものを掘る

2023年度の始まりです。
新しい年度の始まり。
聖書の創世記が記している世界の始まりの物語から私たち聖学院の歩みについて考えてみたいと思います。

創世記の物語はこの世界の根源を語るものです。
神が世界を造った。
光を造った。
その光を見て、神は良しと言われた。
あかるい言葉が続きます。
神様という途方もない大きな方がこの世界に満足している。

様々な解釈があるでしょう。
秩序、正義、希望。
どれも正しいでしょう。
どのようなものであれ、ここで語られているものは良いものです。
この世界は良いものだ。
それが、聖書が持っている世界観です。

聖学院はOnly Oneを探しなさいと勧めています。
本当の自分。
それと出会いなさいと勧めています。
ここにあるものも同じです。
あなたは、人は、その根本にあるものは良いものだ、です。
世界は、人は、良いものだ。
だからそれに気がつけ、です。
聖書、キリスト教に基づいた聖学院の世界観です。

ただ、この世界観は一般的でしょうか。
誰とでも共有できる世界観でしょうか。

国を作り上げるシステムに「資本主義」と「共産主義」というものがあります。
私たちの国もこのシステムに参加しています。
ふたつのシステムはまったく相反するものと表面上は見えます。
資本主義は言わば飴です。
がんばった分だけ、あなたの見返りはあるよ。
自分の幸せのために努力をし、富を蓄積しなさい。
いくらでも増やすことができるからがんばれ、です。
片方の共産主義。
格差がある社会はよろしくない。
あなた達の生活は保証するから国に任せなさい。
国の言うとおりにしておけば大丈夫だから国の言うとおりにしていなさい。
いわばムチです。
飴とムチ。
正反対のシステムの資本主義、共産主義ではありますが、これらはどのような世界観によって生み出されたものでしょうか。

人は放っておけば、ろくなことはしない。
人に任せていれば、秩序は乱れ、悪がはびこる。
飴で制限をかけよう、ムチで暴走しないようにしよう。
資本主義、共産主義、正反対のシステムですが、世界観は同じです。
この世界の根底には悪があるです。
私たちが意識をしているSDGs。
17の目標に向かって、進んで行けば、この世界を守ることができる。
ここにある世界観はどのようなものでしょうか。
人は放っておけば世界を破壊し、未来を奪っていく。
人の根本には悪がある。

多くの世界の人々が持っている世界観はどのようなものか。
世界の本質は悪である、です。
私たち聖学院の世界観は、この世界は良いです。
これは真逆です。
ということは、この聖学院の世界観を持ち続けていくと、多くの人が持っている世界観と衝突をすることになります。
未来の話ではありません。
すでにぶつかっているのでしょう。

あなたたちは世界が良いものだと信じているのか。
なんておめでたい連中なんだ。
世界で起こっていることを見れば答えは明らかだろう。
この世界は悪で出来ている。
それが真実だ。

私たちの世界観は間違っているのでしょうか。

ノルウェーにある刑務所は世界で注目をされているもののひとつです。
そこでは囚人と看守が仲良く暮らしています。
一緒にスポーツをしたり、カードゲームをしたり食事を共にします。
囚人は塀の中で限られてはいますが、自由に過ごすことが許されています。
ビデオを見たり、ゲームを楽しんだり、包丁を使用して料理をすることもできます。

一方、多くの国の刑務所は私たちの想像の通りです。
規律を守らせ、反抗をすれば懲罰を与え、徹底的に自由を奪います。
人は悪いものです。
その悪いものを強制するのが刑務所の務めだと考えられているからです。

ノルウェーの刑務所の考え方は、
人は自分で自分をコントロールできないから犯罪に手をそめる。
自分をコントロールできる人間にする。
それが刑務所の務めだと。
人が行うコントロールは世界を壊す方向には行かない。
人の根源にあるものは良いものだ。
その考えから始まっています。

人の根源にあるものは悪なのか。良いものなのか。
どちらが人の現実をつかんでいるのか。

ひとつの数字があります。
自由を奪い矯正をする刑務所から出所した者、
この者たちの再犯の確率はおよそ6割から7割と言われています。
一方、ノルウェーの再犯率は、2割です。

どちらが人の現実を知っているのか。
どちらがリアルなのか。

聖学院はこの世界は良いものだと信じています。
人はその根底には必ず良いものがあると信じています。
だから自分を掘っていきなさいと言います。
学校での学問はそのためです。
本当の自分を知るために多くのことを学び、沢山の体験をして下さい。
本当の自分に出会う入口が必ずあります。
出会って良かったと、心から喜べる「自分」がいるはずです。
本当の私に出会う。

聖学院が120年大切にしてきたこと
今年度も取り組んでいきましょう。