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§5.「言葉の力」を育てる授業

教科横断型研修
教科横断型研修

国語科の教員は、授業見学と教科会議を通して、改めて「授業」で言語活動を充実させることが豊かな人格形成に欠かせないことを痛感しています。
中学一年生から高校三年生までの六年間で、生徒たちが成長することと言葉の力が育つこととは相関があるということを、強く共有しているのです。
同時に、言葉の力を育てるために、国語の「授業」は重要な使命を持っているのであるという想いを強めています。


国語科の授業のようす
国語科の授業のようす

生徒たちは、自分を見つめる内省を通して、疎外感から自らを解き放ち、あるいは逆に他者に対する排他性を拭い去ることによって成長します。そしてそのときに内省を深める感性を育て、論理的思考力を鍛えることは、言葉の力を豊かにしていくことと同じではないかというアイデアを共有しているのです。
中学(生)から高校(生)に進級すると、読解する文章の内容は急に難しくなります。近代社会の矛盾やポストモダニズムの状況について批判的に思考する力が必要になるのです。
この力はしかし、論理的思考力だけではなかなか理解が伴いません。そうなると国語は生徒たちにとって成長の場ではなく、大学入試の問題の得点を上げることだけが目的になる危険性もあります。他教科もそうですが、学びの構造が「大学受験があるから」となるのは健全ではありません。

国語科の授業のようす
国語科の授業のようす

聖学院の国語の授業は生徒たちの成長と共に生きることが大切ですから、そうならないようにするにはどうしたらよいか、試行錯誤しています。
つまり、中学時代に、豊かな言葉をもつことによって、自分の生活と高度な文章世界との差異を知り、そこを埋められるための授業展開の試みです。
中1では、授業が始まる前に、前回の授業のまとめをプレゼンテーションします。いったい何を学んでいるのかを自ら確認することは、学ぼうとする力への入り口です。また、そのプレゼンテーションを他の生徒が批評する機会も設けます。これによって共に学ぶ力も育ちます。

中学時代に農村体験や研究発表会、記念祭など多様な体験をします。そのとき学ぶ力や学ぼうとする力、共に学ぶ力が育っていないと、「ああ、おもしろかった」で終わりかねません。ですから、学ぶ力、学ぼうとする力、共に学ぶ力を生み出す「豊かな言葉の力」を育てようと話し合っています。
中2では、言葉を身体全体で感じる授業展開はいかにして可能になるかを追求しています。言葉は生徒たちの外にある社会のコミュニケーションツールですが、同時に自分の中から生まれるものです。生きた言葉は、身体感覚も伴います。このことに気づけば、生徒たちを取り巻く社会環境と生徒たち自身がつながるのです。