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§8. 教師も生徒も「共に学ぶ」英語

聖学院は、109年前に、アメリカ人宣教師H.H.ガイ博士により神学校として創立されました。「宗教教育」「男子教育」、そして「英語教育」が聖学院教育のDNAであり、聖学院教育の根源的3ピラーズとして、その伝統は今も継承されています。旧制聖学院中学校の初代校長石川角次郎は、はじめ東京大学に学んでいましたが、当時の東大総理・加藤弘之の社会的ダーウィニズムの「優勝劣敗の思想」に嫌気がさすと同時に世界市民的発想のない当時の風潮に抗い、米国に留学して世界的視野で学問をおさめてきました。その先見性は、キリスト教と世界言語を学ぶという普遍的姿勢からすれば必然的であり、それゆえその精神は今もこれからも有効なのです。
そのような聖学院の歴史的前提があるからこそ、良質の英語教育が展開されるわけです。しかしながら、この英語教育の質は、マシンのメカニズムのそれとは違います。言語はコミュニケーションの道具ですが、それは私たち一人ひとりが平和の道具であるのと同じくらい大切なもので、言語は人間であるといっても過言ではありません。ですから、教師と生徒あるいは生徒同士の対話を通して、人格の成長と共にその言語能力も育っていくのです。

ところが、生徒一人ひとりの成長を見守るというのは、そう簡単なことではありません。対話やコミュニケーションとは、もともと互いに誤解しやすいものであり、その都度互いに問い返しながら確認していく過程が重要です。この過程は自然な対話である一方で学習方法という理論も必要になります。特に第二外国語である英語の学習理論は多種多様ですから、その研究は欠かせません。英語科では、そのために教科会議で、現状の英語の学習システムや生徒の状態について話し合っています。


その話し合いの中から、リーディングのプログラムや簡易ディベートのプログラム、英語ゲームのカード、様々なプリント、学び合いのプログラムなどを開発し、授業の時間の中で創意工夫しています。最近では、「授業フォーラム」――教科横断的に有志の教員が主体的に集まって実施している――で、英語を共に学ぶ「学び合い」の授業実践についてプレゼン・議論して研究を深めています。教師と生徒、生徒と生徒だけではなく、このような教師どうしも「共に学ぶ」過程が、生徒一人ひとりのモチベーションを高め、言語能力を豊かにする英語教育の質を形成しているのです。