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校長挨拶・ブログ

Only One for Others -「私」を見つける歩み-

校長 伊藤 大輔

2021年4月から第13代校長に就任いたしました伊藤大輔です。1981年3月に聖学院高等学校を卒業してから40年ぶりにまた通うことになりました。40年の間、いくつかの教会に牧師として仕えてきました。また学校でも働いてきました。40年を振り返るといつも同じところにいたような気がします。only one。それをいつも探していたように思います。

私が卒業した時の第8代校長の林田秀彦先生は「number oneではなくonly oneだ」と繰り返し仰っていました。高校生の私はその言葉の違いをわかったつもりになっていました。ですが、このnumber oneではなくonly oneは「わかった」と軽はずみに言えるものではないと今は思っています。さらに言うならばonly oneは生涯かけて向き合うものだとも思わされています。

number oneとonly oneの違いはなんでしょうか。number oneになるためには必ず「他者」が必要です。他者と比較して自分は上か下か。全てのものが下になった時number oneは出来上がります。他者なくしてはnumber oneは成り立ちません。それは他者を常に意識するということです。他者ばかりが気になる。心の動きで言えば、他者を気にすること、他者に心が乗っ取られた状態です。支配をされていると言えます。理性を失えば簡単に争いを引き起こす可能性を常に秘めていると言うことでもあるでしょう。

only oneは他者に依存しません。支配もされません。心も乗っ取られた状態でありません。ただ、このonly oneはどうやったら見つけられるのでしょうか。「これが私だ」と思ったものがあったとしても、よく考えてみると「誰か」に憧れていたり、「過去の成功」を大切にしていたりして「私だ」と思っている。だとすれば、それは心が「誰か」「過去」に乗っ取られた状態です。私以外のものが介入しているのですからonly oneではありません。

only oneはどうやったら見つけられるのか。自分の心にあるものを洗い落としていく。成功も失敗も、大好きな人も、大嫌いな人も、脇に置いて乗っ取られていない心を探していく。本当の自分に近づいていく。そうすればきっと「これをするために自分はいるんだ」「神が期待しているものはこれなんだ」「この人たちのために生きよう」for othersが見えて来ます。それは平和を生み出す思考です。私もまだonly oneを見つけられないでいます。見つけられませんが大切なことだと思っています。40年前に大切なことを教えてくれた聖学院でまたご一緒に歩める幸いを心から感謝しています。これからどうぞよろしくお願いいたします。


校長プロフィール

1981年、聖学院高等学校卒業。東京神学大学大学院博士課程前期修了。南国教会(高知)、銀座教会(東京)などを歴任し、現在は渋谷区代官山にある本多記念教会牧師。また、児童養護施設堀川愛生園で指導員、青山学院大学高等部などで非常勤講師を務める。2021年4月より第13代聖学院中学校・高等学校校長として着任。