教科学習

カリキュラム・ポリシー

学びたくなる・探究したくなる「授業」

敷かれたレールの上を走るのではなく、主体的に動いて生活や社会を作っていく。価値づくり・ものづくり・ことづくりができる――そのような生徒に成長してもらうため、本校の授業は「問い」を大切にしています。

本校の授業設計では、カナダのヤング博士が提唱するICEモデルを採用しています。そのICEモデルに基づいた「問いのストーリー」を単元毎に策定しています。単元の学習ゴール=生徒たちが他者や世界に貢献するための価値づくりや課題解決(Extensions)を設定しており、その課題解決に向けた知識(Ideas)や知識の活用(Connections)を授業において「問い」として投げかけていきます。

授業構造を可視化する「思考コード」

思考コードとは、首都圏模試センターが開発したものを「聖学院版」に改訂したものです。横軸にICEをとり、縦軸に for自分/ for他者/for社会をとった9つのマトリクスで表現しています。授業構造を可視化するために、思考コードは有効であり、授業デザイン研究やシラバス策定に利用しています。

カリキュラムポリシー

聖学院のカリキュラムポリシー6項目は以下の通りです。
Information literacy(情報リテラシー)
Concepts-focused learning(概念化)
STEAM learning
Multifaceted thinking(多角的に考え、本質をとらえる)
Creativity(突破思考)
Academic honesty(学問的誠実性)

Information literacy(情報リテラシー)

  • 生徒は意思決定や問題解決に必要な情報へ適切にアクセスし、そこで得た情報を効果的かつ倫理的に使用しなければならない。

  • 情報リテラシーは、独自性に富んだ探究学習プログラムの過程でこそ養われる。そのためには、プログラムに関わるステークホルダー間で入念な計画がなされる必要がある。

Concepts-focused learning(概念化)

  • 概念化とは、物事、出来事、考えを特定し、発展させ、分類するのを助ける知性の働きである。得た知識を常に整理することによって学習効率が向上する。

  • 単なる事実をそのまま個別に認識するよりも、トピックを参照しながら断片的な情報を全体的な体系の中に落とし込んでゆくとき、学習者は思考のプロセスに強く引き付けられ、学習の動機を相乗的に増してゆく。
    ・断片的な情報→トピック(断片的な情報をグルーピング)→概念化→一般法則・理論を見出す
    【トピックの例】対立、複雑性、信念、価値観、逆説、相互依存、相互作用、自由、変質、力、同定、様式、関連… 

  • 概念化スキルは知識移転のための強力なツールとなる。ある分野で得た知識は、概念化されることによって他の異なるコンテクストでの活用が可能になる。例えば、自然科学で得た知識を歴史の学習で活かすというような教科横断型学習を効果的に実行するためには、学習者が複数の分野間の関連を見出し整理する能力(概念化スキル)を有していることが不可欠である。これがないと、結局学習目標が見出せず表面的な学習に終わってしまう。

  • 学習内容のうち「敷居」となる学習項目を見極める必要がある。ここでいう「敷居」とは、それなしには学習が進まなくなってしまうような、新しい理解や解釈の方法を可能にするような学習項目である。具体的には、分数や浮力、光合成、引力、分析、また、経済学でいう機会費用、均衡、値段や価値の概念が挙げられる。これら重要な「敷居」となる学習項目の難しさを意識し、これらを中心に授業内容を考えることが大切である。

STEAM learning(STEAM=Science, Technology, Art, Engineering, Mathematics)

  • 科学研究に対して、理系文系の垣根を超えて教科横断的にアプローチする。それは創造性に富んだ実践の機会となる。

  • 生徒が現実世界の課題に関わり、学校外の専門家と対話する機会をもてるようにする。

  • 科学・技術・数学の学習は刷新的で創造的で本物でなくてはならない。

  • 生徒はSTEAM学習を通して好奇心をもって新しい状況に向かい、知識やスキルを駆使して課題を明確にし、責任ある決断を行うことが求められる。

Multifaceted thinking(多角的に考え、本質をとらえる)

  • イデオロギーや原理主義、教化、偏見、迷信に惑わされることなく、多角的に議論を見極め、公正に判断する思考力は、国際社会を生きる人間として欠くことのできない資質である。

  • Multifaceted thinkingは探究学習において重視される。特にオープンエンドの問いに接した時、生徒は自らの立場を明らかにし、根拠をもって答えることが求められる。生徒はまた、深い思考を導く挑戦的な問いを喜ぶ姿勢を学ぶべきである。

  • Multifaceted thinkingを実際に行ってみるには、生徒がそれを行なうにふさわしい知識をもっていることが求められ、かつ、安心して発言できる学習環境が必要である。

  • 実証されていない情報に対して、教師は率先してMultifaceted thinkingを行ない、生徒のよき模範となるべきである。

Creativity(突破思考)

  • 創造性は芸術に限られたものではなく、複雑な問題を解決する際にも必要とされる。

  • 創造的な教師であることはプロセスの一部でしかない。ゴールはあくまでも生徒たちのCreative thinkingを刺激することである。

  • 増やす、調節する、改める、修正する、類比する、結合する、創造する、設計する、アイデアを出す、仮説を立てる……などの指示用語は生徒の創造的思考を奮い立たせる。

  • 創造性を育成するためには、生徒がじっくりと自由に考える時間が必要である。また、創造したアイデアは実現されるべきという認識に立って生徒の活動を支援してゆく。

Academic honesty(学問的誠実性)

生徒が自立して探究できるようになることは、学びの中核である。学校は生徒にテクノロジー手段を用意し、自信をもって探究に取り組むことのできるよう倫理的な基礎を理解させるべきである。

  • 優れた探究学習を行うためには学問的誠実性について深く理解していなくてはならない。学校は、知識の盗用が許されない行為であることを生徒によく分からせなければならない。

  • 学問的不誠実を回避する最も良い方法は、教師が独創性を必要とするタスクを用意することである。

  • 例えば図書館司書と教科担当が連携するなど学校内で連携し、生徒が独創性の高いタスクを克服するのを支援してゆく。

  • 学問的誠実性は明確な参考文献を必要とする。学校は全校共通の参考文献のガイドラインを作成し、全生徒への周知を図る。

  • 学問的誠実性は形成的評価によって強化される。成果物の出来を評価するだけでなく、ふり返りを行い学習記録を保存しておく。